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2021.09.04 17:00

IPO間近の中国「センスタイム」を設立したMIT出身のAI界の重鎮

Photo credit should read Costfoto/Barcroft Media via Getty Images

ソフトバンクグループなどが出資する中国のAI(人工知能)テクノロジー企業「センスタイム(商湯科技)」は8月27日、香港市場にIPOを申請した。これにより同社を7年前に共同創業したAIの教授が、世界のビリオネアの仲間入りを果たそうとしている。

1996年にMIT(マサチューセッツ工科大学)でコンピュータビジョンの博士号を取得した湯暁鴎(Tang Xiaoou)教授は、23億ドルの資産を築いている。現在53歳の湯は、仮目論見書をベースとしたフォーブスの試算によると、同社の21.7%から27%の株式を保有する筆頭株主だ。センスタイムは昨年末の資金調達ラウンドで120億ドル(約1兆3200億円)の評価を受けていた。

上海と香港の両方に拠点を置く同社は、上場の時期や規模を明らかにしていない。ロイターは以前、センスタイムが最大20億ドルの調達を目指していると報じていた。

センスタイムは、2019年に米国の貿易ブラックリストに加えられ、米国の機器や技術へのアクセスに制限を受けている。目論見書によると、同社は今後の調達資金の約3分の2を研究開発に使用する予定という。

センスタイムの2020年の売上高は、前年比14%増の34億5000万元(約590億円)で、優先株の評価額の変動を含む純損失は122億元に拡大していた。

現在も香港中文大学の教授を務め、画像処理や信号解析などを教える湯は、2014年に博士課程の学生だった徐立(シュー・リー)と、徐冰(シュー・ビン)の2人とセンスタイムを共同創業した。現在、湯は同社の研究戦略を担当し、39歳の徐立がCEOを務めている。

また、執行役員の徐冰(31)が、資金調達と戦略的投資を担当し、湯の義理の弟であるWang Xiaogangも取締役として研究チームを率いていることが目論見書に記載されている。

センスタイムは、中国におけるAIテクノロジーの利用の拡大を追い風に収益を伸ばしている。同社は昨年の売上の40%を政府の関連機関から得ており、交通量や公共施設の利用状況、人々のマスクの着用状況などを監視するためのソフトウェアを提供している。今年の上半期の、政府関連の売上は48%に達していた。

しかし、センスタイムは、中国政府が8月に発表し、11月から施行予定の新たなデータ・プライバシー法による不確実性に直面していると投資家に警告している。「このような規制要件は常に進化しており、様々な解釈がなされたり、大幅に変更されたりする可能性がある。その結果、当社の責任の範囲について不確実性が生じることになる」と、同社の目論見書には書かれている。

編集=上田裕資

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