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2015.05.24 08:30

私がこの起業家に投資した理由:田島聡一(サイバーエージェント・ベンチャーズ)⇒高瀬俊誠(A-STAR)




失敗を成長の糧に変えた連続起業家
私がこの起業家に投資した理由
田島聡一(サイバーエージェント・ベンチャーズ)⇒高瀬俊誠(A-STAR)


失敗を“成長の糧”に変えた連続起業家 高瀬俊誠が創業したA-STARは、IT系エンジニアに特化した求人情報やシステム開発業務を紹介するクラウドソーシング型サイト「Agency-star.com」を運営する。2012年に設立し、IT業界に根強く残る多重請負構造の問題を、エンジニアが正当な評価・報酬を受けられる環境をつくることで解決することを目指している。

田島聡一が代表を務めるサイバーエージェント・ベンチャーズは、まだ企画書しかない創業段階で同社へ投資を行った。――――――

田島:
高瀬さんに投資させていただいたのは、まず市場規模が大きいという事業領域としての魅力。さらに、日本におけるIT系エンジニア業界の問題解決という大きなビジョン。僕らがいま、アジアを中心に8カ国でベンチャー投資活動をするなかで、特に新興国であるインドネシアやベトナムで、若くて優秀なエンジニアが増加しているのを目の当たりにしています。そんななか、日本が置かれている“SIガラパゴス”が目に余り、個人的にもなんとか解決したいという思いがあった分野だったからです。

次は、経営チーム。僕の投資基準は「大きなキャンパスに緻密な字が書ける経営チーム」。高瀬さんは「大きなキャンパスに描ける人」で、副社長の石山正之さんは「緻密な字を書ける人」。多くの場合、大きなキャンパスに描ける人は字も大きくなり、緻密な字を書ける人はキャンパスも小さくなる。それに加え、2人とも業界経験が長い人材業界のプロフェッショナル。こんな経営チームはなかなかいないと思いますね。

高瀬:
私は、いわゆるシリアルアントレプレナー(連続起業家)で、3度目の起業です。前回の起業時も人材事業で創業し、売上高46億円、従業員300人の規模まで事業を拡大させました。しかし、リーマン・ショック後に売り上げが厳しくなり、会社を売却した経験があります。
日本ではよく「シリコンバレーのような環境を」という言い方をする投資家が多いですが、一度失敗した経営者に出資するかというとやはり別の話になります。そんななか、サイバーエージェント・ベンチャーズは、失敗を経験しているシリアルアントレプレナーにも投資している。とても感謝しています。

田島:
シリアルアントレプレナーはこれまでの経験を生かすことで回り道を減らせるので、相対的に事業を軌道に乗せるまでのスピードが速い。特に、過去に失敗している起業家は、重要な局面における意思決定を慎重に行うことができ、でも一度やると決めたら一気に進むというメリハリが利く。経営や事業の勉強会はたくさんあっても、やはり自分自身が失敗してからではないとわからないことも多い。だから、起業家として見えている視界の広さが違うと思います。
高瀬:経営チームや社員を大切にするというのは、これまでの失敗経験があるので特に心がけています。まずは経営陣、社員、そしてステークホルダーから支持される社長でなければならない。それ以外からは“自分を勘違いさせる”から必要ない。だから、メディア露出もせず、外部の会食や起業家同士の付き合いにはできるだけ行かないようにしてきました。
ただこれからは、IPOを目指して事業拡大のため、外に出て行こうと思います。支持されているいまだからこそ逆に出ていかないと失望をかってしまうので。

田島:
高瀬さんは、サービスではなく、産業そのものを創ることにチャレンジしている起業家。中長期的には日本だけでなく、アジア全体に大きなインパクトを与えられる起業家だと思っているので、非常に期待しています。

山本智之=文 平岩享=写真

この記事は 「Forbes JAPAN No.10 2015年5月号(2015/03/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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