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2015.04.16 10:00

日本は「米国式経営」を模倣すべきではない[世界の権威に聞く「最新・企業経営論」]

イラスト=ベルンド・シッファカーデッカー

"今もこれからも社員が「競争優位確保のための大切な源泉」であることに変わりはない。"

米国西海岸屈指の経営学者といえば、スタンフォード大学ビジネススクールのジェフリー・フェファー教授をおいてほかにはいない。

同大学の教壇に立って35年余り。「人材重視の経営」が結果的に企業の収益増につながることを書いた『人材を活かす企業』など、多くの著書を持つベストセラー学者でもある。2013年には、世界トップクラスの経営思想家を選ぶ「TheThinkers50(シンカーズ50)」で24位にランクインしている。経営トップへの歯に衣着せぬ批判でも知られる、組織行動論の大家だ。

フェファー教授の持論は、「社員を大切にし、労働意欲と組織力を高めることが収益増の秘訣であり、経営陣の務め」というものだ。高成長の業種を正しく選択することが企業の成功を大きく左右する、との社会通念は誤りだという。だが、実際は、大半の幹部が、こうした点を理解していないと、同教授は警告する。

今年9月15日に発売される予定の『Leadership B.S.』(リーダーシップBS)では、そうしたリーダーシップ批判を展開しているが、出版前にもかかわらず、早くもワシントン・ポスト紙の「2015年に注目すべきリーダーシップ論、12冊」に選ばれている。「B.S.」は、「ふざけるな」という意味のスラングの略語だ。

「雇用の保証」が最重要条件

『人材を活かす企業』では、効果的な人材管理のカギとなる7つの条件が示されている。そのトップが「雇用の保証」だ。

同教授によれば、有能な社員には長期雇用を保証すべきだという。景気変動による安直なレイオフは、労働者の心身に多大な影響を与えるだけでなく、企業にとっても打撃だ。とりわけ何年にもわたって段階的にリストラを行うと、社員が会社の将来に不安を感じ、優秀な人材が真っ先に流出してしまう。

長期雇用を前提にすれば、同教授が「徹底した採用」と呼ぶ、人材の選別も必要になってくる。

「企業の価値観や風土を分かち合える人材を採るべきだ。スキルで採ってはいけない」

組織力強化には、チーム単位で仕事を任せ、裁量を与えることも有効だ。連帯感や責任感、迷惑をかけてはいけないという気持ちが生まれ、効率が上がる。

モチベーションの向上には、十分な成功報酬も欠かせない。労働市場では「安かろう悪かろう」(同教授)が常識だからだ。
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文=肥田美佐子(ニューヨーク在住ジャーナリスト)/イラスト=ベルンド・シッファカーデッカー

この記事は 「Forbes JAPAN No.10 2015年5月号(2015/03/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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