テクノロジー

2019.01.01 17:00

ネットフリックスの「イッキ見」支える女性エンジニアの技術

ネットフリックスでアルゴリズム主任を担当するAnne Aaron

ネットフリックスのスムーズな動画再生を支える社員の一人がAnne Aaronだ。同社でアルゴリズム主任を担当する彼女は、世界1億3700万人のユーザーが、ネットの接続環境が万全ではない環境下でも、遅延なく動画を視聴できる仕組みを整えている。

スタンフォード大学で電子エンジニアリングのPh.Dを取得したAaronは、シスコシステムズに勤務後、7年前にネットフリックスに入社した。彼女が同社で果たした役割の一つが、米国以外の利用者向けのストリーミング環境の整備だ。

ネットフリックスの利用者の57%以上は米国外のユーザーだ。しかし、同社がサービスを提供する190カ国のなかにはネットの接続速度が遅く、データの上限が決められている場合も多い。

4ギガのデータ制限で、モバイルから番組を観る利用者らは、好みのドラマをイッキ見することもままならない。

この問題の対処にあたるのがAaronたちのチームだ。フィリピン生まれの彼女は地元のトップ校のアテネオ・デ・マニラ大学で学んだ後、2000年に米国に移住した。フィリピンでのモバイルのネットの接続速度は遅く、データ容量には制限がある。

「途上国からやってきた私は自分の経験から、ネットフリックスの次の成長に向けて何ができるかを考えた」とAaronは話す。

ネットフリックスが世界への拡大戦略を打ち出すなかで、彼女はいかに動画のデータ容量を抑えるかを、エンジニアたちと話しあった。試行錯誤を重ねるなかで、4ギカのデータ制限下でも、26時間の間、高い画質で番組を観られるソリューションが生まれた。この技術が、世界の人々がイッキ見を楽しむことを可能にした。

Aaronが果たす役割は、大ヒット作品を送り出すことに比べれば地味なものかもしれない。しかし、彼女はこれこそが自分がやりたい仕事だと考えている。

動画圧縮技術をスタンフォードで学んだ

スタンフォード大学で彼女が動画圧縮技術を学んでいた頃、ブロードバンドはまだ普及しておらず、ネットフリックスはDVDレンタルの会社だった。彼女が籍をおいたラボは、巨大な動画データを効率的に圧縮し、転送可能にするテクノロジーを開発していた。

「エンコーダーとデコーダーを組み合わせて、快適な動画視聴を可能にする。それは当時、全く新しい領域だった」と彼女は話す。

卒業後、シリコンバレーの動画ストリーミング関連のスタートアップに務めた後、Aaronはシスコに入社。そこでFlipShare Videoと呼ばれるソフトの開発主任を務めた。彼女がネットフリックスに入社した2011年は、同社が動画ストリーミング事業に参入して4年が経ったタイミングだった。

Aaronが開発の指揮をとったもう一つのイノベーションが、番組のダウンロード機能だ。これは機能には端末がWi-Fiに接続された際に、自動的に次のエピソードをダウンロードする「スマートダウンロード」の仕組みも備えている。

長年にわたりネットフリックスに勤務してきた彼女は、この会社には性差別が存在しないと話す。「外部のミーティングの場では、女性だからといって特別扱いされることがある。今でもそのことに驚いてしまう」

Aaronはツイッターの投稿欄のトップに、彼女のお気に入りのハッシュタグ#WITBragDayを添えた投稿を表示している。WITはテック業界で働く女性(women in tech)を意味し、このハッシュタグは彼女らに誇りを持とうと呼びかけている。

「ネットフリックスの画質が良いと感じてくれたら素晴らしい。これは私たちのチームがやった仕事だ。#WITBragDay」と彼女はツイートした。

困難な技術的課題を乗り越えて、シンプルではあるがとても重要なイノベーションをAaronのチームは生み出した。

編集=上田裕資

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