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2017.10.24 15:00

技術と仕組みで「稼げる農業」を世界へ

(左)アーキタイプ 中嶋 淳(右)seak 栗田 紘(photograph by Toru Hiraiwa)

栗田紘が2014年4月に創業したseakは、農業未経験者でも就農を可能にするプラットフォーム「LEAP(LEt’s Agriculture Program)」を提供。就農に必要な、1. 準備、2. 農地、3. 施設/機材、4. 栽培、5. 販売の課題解決を行い、「稼げる農業」の仕組みをつくっている。

中嶋淳が代表を務めるアーキタイプは大企業の新規事業コンサルティング、インキュベーションを行い、seak社の創業準備時から支援している。


栗田:二人の出会いは、私が、次世代パーソナルモビリティ「WHILL」のCOO(最高執行責任者)時代の2012年。その後、アーキタイプに入社し、大企業の新規事業の支援として、農業をテーマにしたプロジェクトに複数関わる中で、農業の課題と可能性に目が向き、“自分でも”という思いと重なったことが創業のきっかけです。

中嶋:創業以前から、よく起業や事業についての相談に乗っていました。当時、アントレプレナー・イン・レジデンス(企業の中で起業準備をする)制度で支援したい、と思っていた時期でもあり、応援しない理由はありませんでした。とはいえ、農業は十分なビジネスモデルの仮説検証が必要な領域ですので、投資をして「頑張れよ」で終わるものではないとも思っていました。

栗田:創業時は、アーキタイプの100%子会社。その中で、事業の仮説検証にフォーカスをさせていただき、1年8カ月後にMBO(経営陣が参加する買収)をしました。創業当時、自分で農業に対する課題を背負ってみないとわからないと、神奈川県秦野市にある農家で1年間研修しました。そして今も、藤沢市から認定新規就農者として耕作放棄地を借りて農業をしています。

中嶋:私が起業家を見る視点は、1. いい問題を探しているかという「問題発見力」、2. それに対して“なるほど”といえる「アイデア」か、3. アイデアを実現する技術や仕組みといった「実行力」があるか、の3点セット。あとは、経営陣に業界の知見や経験があるかですが、栗田さんは全部揃っていました。

seak創業以降で、印象深かったのは、独自に開発した土を袋に入れて栽培する「袋栽培」を生み出したこと。土壌改良やハイテク農業の設備投資も必要なく、誰でもすぐスタートできる方法に、思わず“なるほど”と合点がいきました。日本の新しい農業メソッドが海外へ輸出できる点も素晴らしいですね。

栗田:現在は、無線LANが張り巡らされ、温度、湿度などの状況をセンサーで管理するビニールハウスの中で、袋栽培を行い、農薬を極力使わず、水や肥料も独自のレシピで、タイミングよく自動化して与えています。

トマト、きゅうり、ナス、ピーマン、ズッキーニなどを育て、ストレスがない環境で育った「ゆる野菜」というキャッチコピーで、東京のデパートや高級スーパーに出荷し、一般的な野菜のほぼ2倍の価格で売られるなど、初心者でもできる簡単さと同時に、稼ぐための収益性にまでこだわっています。

我々が提供しているプラットフォーム「LEAP」では、袋栽培をトリガーに、低コストで高単価、収量も最適化された野菜づくりを可能にしています。このモデルをフランチャイズ方式で日本国内をはじめ、世界に広げ、「これからの農業の新しい形をつくりたい」と思っています。特に、CDO(最高デジタル責任者)を務めているのがタジキスタン人で、「絶対にタジキスタンには展開しよう」と約束をしているので、頑張っていきたいですね。


中嶋 淳◎アーキタイプおよびアーキタイプベンチャーズ代表取締役/マネージングパートナー。一橋大学卒業後、1989年電通入社。2000年創業直後の投資企業インスパイア入社、副社長に就任。06年アーキタイプを設立。主な投資先は、データセクション、ウォンテッドリー、FlyDataなど。13年にはアーキタイプベンチャーズを設立。

栗田 紘◎seak代表取締役。1983年横浜市生まれ。東京工業大学卒業後、電通入社。その後、WHILL創業にCOO(最高執行責任者)として参画。2014年4月、seakを創業し、代表取締役に就任。個人として、藤沢市認定新規就農者となり、その後法人としても藤沢市では初めての認定を取得。農業プラットフォーム「LEAP(LEt’s Agriculture Program)」を展開。

文=山本智之

この記事は 「Forbes JAPAN No.39 2017年10月号(2017/08/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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