世界最大級の広告代理店がユーチューブから撤退 悪質動画に反発

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グーグルが窮地に立たされている。過激主義者の動画に広告が表示されることを回避したい広告主たちが、ユーチューブから広告を取り下げているのだ。

世界6位の広告代理店ハバス(本社フランス)はユーチューブへの出稿を停止した。同社の英国オフィスはドミノピザやエミレーツ航空、BBCなどを顧客に持っている。ハバスのユーチューブへの広告出稿額は年間1億7500万ポンド(約240億円)に達するが、これをすべて取り下げた。ガーディアン、ロレアル、ホンダ、大手スーパーマーケットのセインズベリーズらも出稿を停止している。

騒動の発端は英タイムズ紙が、白人至上主義団体KKKやホロコーストを否定する牧師のスティーブン・アンダーソン(Steven Anderson)等の過激主義者のユーチューブ動画に、大手企業の広告が配信されていると報じたことだ。

グーグルは3月17日、イギリス内閣府に呼び出され、内務特別委員長から「極めて問題のある」活動を行っていると指摘された。「グーグルは著作権に問題のある動画はユーチューブから即座に削除しているが、憎悪や偏見に満ちたコンテンツを野放しにしている」と委員長はグーグル宛ての書簡で述べた。

英国政府は軍のリクルートや献血の呼びかけ等、すべての広告を取り下げ、グーグルが返金に応じるのかも問いただしている。

「税金を使った広告が不適切なコンテンツと共に表示されたことは容認できない。グーグルにはその旨を明確に伝えた」と、政府関係者はフォーブスに語った。

グーグルのイギリス支社の責任者のローナン・ハリス(Ronan Harris)は「広告主や広告代理店から、物議をかもすようなコンテンツに広告を表示しないよう、要請を受けた」と声明の中で述べた。

「グーグルは現状で広告を表示する場所を広告主や広告代理店が選べるツールを用意しているが、今後は不適切な内容で利益を得ている動画やコンテンツへの対策を強化できると考えている」とグーグルは述べた。

一方で、グーグルは今後のポリシー変更で「広告主がユーチューブやGoogle Display Networkの広告表示位置を詳細に選択可能になる」としており、新ポリシーの導入後は広告の表示位置の決定は広告主側の責任になることを暗に示している。

つまり、今後は同様な問題が発生した場合、グーグルは広告主にも責任があると主張するのかもしれない。

編集=上田裕資

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