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2016.12.18 17:00

「想いが届く」ラジオの可能性[小山薫堂の妄想浪費 vol.17]

世界中どこでもいつでも、ラジオが心をあたためる!(illustration by Yusuke Saito)

放送作家・脚本家の小山薫堂が「有意義なお金の使い方」を妄想する連載第17回

薫堂少年をメディアの世界へと誘いざなったのは、熊本は鶴屋百貨店のラジオ番組。世界の隅々まで声と想いが届く“ラジオ”の魅力をあらためて考えてみた。


前号で百貨店の魅力について書いたのだが、ちょっとだけその続き。熊本県に創業60年を超える「鶴屋百貨店」がある。鶴屋はオープン翌年、熊本放送(当時、ラジオ熊本)の開局日である1953年10月1日に、「午後2時5分ー寸一服(ちょっといっぷく)」というラジオ番組を開始した。以来、14時5分から20分間、本館1階のサテライトスタジオより毎日公開生放送を行っている(もちろん熊本放送最長寿番組である)。
 
構成はいたってシンプルで、スタジオに集まっているお客様に挙手していただき、「今日は何をお買いになりましたか?」などと尋ね(「ああ、今日から◯◯フェアが開催されましたものね〜」と、宣伝の合いの手を入れるのは忘れない)、最後に歌のリクエストに応えるというもの。家でラジオを流し聴きしていた人は気づかぬうちに購買意欲を掻き立てられて、翌日鶴屋に行ってしまうかもしれない。

こんな画期的なメディアミックスが60年以上も前に地方の百貨店で始まっていたなんて、なかなか稀有な話ではないだろうか。思えば、小学生のときに鶴屋の公開録音を見にいったのが、僕にとってメディアというものに触れたファーストコンタクトだった。そのときのメディアへの漠然とした憧れが、いまの僕につながっていることは間違いないわけで、あらためて鶴屋さんに感謝申し上げる次第である。

エンターテインメントの原型
 
僕が仕事として初めてラジオと関わったのは、大学1年生。文化放送の「吉田照美のてるてるワイド」でアシスタント・ディレクターを経験させてもらった。その後、いくつかの番組で構成やパーソナリティを経て、98年、34歳でFMヨコハマの「FUTURESCAPE」というレギュラー番組を持つようになった。

毎週土曜日朝9時から2時間の生放送で、相棒はラジオパーソナリティ・キャスターとして活躍する柳井麻希さん。ラジオに縁のない人は信じ難いと思うかもしれないが、ラジオほどコアなファンをつくりやすいメディアはない。それは、たとえばこんなときに実感する。

昨年、FMヨコハマ開局30周年記念公式キャンディ「横濱アイスクリンキャンディ」が発売された。これはFUTURESCAPE番組内で、「横浜の人々に愛される飴をつくろう」を合言葉に開発プロジェクトが誕生したことがきっかけ。

スポンサーの味覚糖さんがつくった飴の試食を番組内で行い、個別包装はリスナーから募集した横浜の名所写真をイラストに描きおこし、オリジナルステッカーも付録につけた。絵のド下手な相棒・柳井さんに描いてもらったマーライオンのイラストも、個別包装100個に1個程度の割合で入れてもらった。

そして、発売日当日「ぜひ買ってください!」と放送したら、なんとその日の横浜のコンビニで圧倒的売り上げを誇ったのだ。ポスデータによると、AKBのCMで販売した品よりも高い記録をつくったらしい。このデータをもとに味覚糖は全国販売に踏み切り、横濱アイスクリンキャンディはヒット商品となった。

この話には続きがある。Né-net(ネ・ネット)というイッセイ・ミヤケ系列のブランドがあるのだが、デザイナー高島一精さんが番組のコアなリスナーで、柳井画伯の下手ウマ・マーライオンをいたく気に入り、マーボーダーT、マーポーチ、マーソックスなど、コラボアイテムを制作してしまったのである。

ラジオ番組がコアなファンをつくり、そのファンとともに何か新しい企画に火をつけて、マスに展開できるなんて、ラジオ番組は捨てたもんじゃないなと思いませんか?
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イラストレーション=サイトウユウスケ

この記事は 「Forbes JAPAN No.29 2016年12月号(2016/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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