テクノロジー

2016.01.23 12:01

トイレの回数でクビ? すべて監視される時代が来た[Part1/2]

Mark Airs / gettyimages

企業が従業員に血液検査を義務付け、従わなければ健康保険に加入させないという時代、保険会社がクレジットカードの利用情報を閲覧し、加入者の健康状態を探ろうとする時代、ドローンが住宅の所有者に対してほとんど何の責任も負うことなく、その家の裏庭や寝室の窓の外を飛びまわる時代に、何が起こり得るだろうか?技術革命は様々な形で、現実世界におけるプライバシーの基準をつくり変えている。

米国には、トイレに行く回数を監視するプログラムを導入した企業がある。2014年に話題になったこの企業は、1日当たりトイレ休憩を6分に制限。日常的に規定を超えるトイレ休憩を取った従業員は、解雇する可能性があると通知した。

今年1月11日には英紙テレグラフが、在席か不在かを監視する装置を従業員の机の下に取り付けたことで厳しい批判を受けた。モニターを設置することで、就業時間中に机から離れていた時間を正確に計測することが目的だったというが、激しい反発を受け、同社はこの方針を撤回すると発表した。

データ依存社会とプライバシー

現在の「シェアリング・エコノミー」(共有型経済)における傾向を見てみると、ウーバーなどの企業は完全に、データ主導型のアルゴリズムの利用を基盤に業界を築いている。雇用も価格設定も、純粋にデータのみに基づいて行われる。だが、こうしたデータ主導型の考え方が健康管理の分野にも浸透したら、一体何が起きるだろうか?従業員の生産性を最高レベルに引き上げたい企業は、従業員からその労働力のすべてを搾り取るために、彼らの生活の「最適化」を図ろうとあらゆる医療データを利用するかもしれない。

インターネットサービス会社AOLのティム・アームストロングCEOは2014年、自社の財務状況を悪化させている原因として2人の従業員とその生まれたばかりの「ひどく苦しんでいる」子供たちを例に挙げ、退職金制度の変更を打ち出した。多くの人たちはこの時、なぜ大手企業のCEOが従業員やその配偶者の健康問題について知っているのか疑問に思った。だが、自家保険制度を採用している大手企業は幹部に対して定期的に、従業員の医療費について詳細を報告していたのだ。こうした情報には、保険加入者の病名や施された治療方法なども含まれていた。

同CEOに対する激しい非難の声についてCNNはこの時、従業員の健康維持プログラムに関する懸念はますます高まっていると報じた。それまで保険会社でさえ集めていなかった個人の血液検査の結果や飲酒の習慣、体重、血圧など、健康に関する詳細なデータが収集されるようになっていたのだ。非営利団体「センター・フォー・デモクラシー&テクノロジー」で医療とプライバシーの問題を担当する専門家はCNNに対し、「健康の名を借りた (プライバシーの)侵害行為が頻繁に行われるようになっている…機密情報を個人のものとして維持する権利が、徐々に奪われている」と語った。

それからおよそ一年がたち、この懸念は現実のものになった。ブルームバーグは今年1月15日、従業員に健康診断を義務付け、応じなければ会社を通じた健康保険への加入を認めない米国企業について報じた。企業は合法的に、社内規定へのコンプライアンスを理由に従業員に対し、血液検査をはじめとした検査を義務付けることができる。さらに、検査の結果次第では従業員の健康保険加入を認めないと判断することもできる。仮に加入を認めても、喫煙者なら高い保険料を徴収することが可能だ。

Part2はこちら

編集 = 木内涼子

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